
| 第3号 | 平成14年9月1日発行 |
肝臓病について |
働き者で、なかなか疲れた表情を表に出さない肝臓は、私たちの体の維持に欠かすことのできない重要な臓器です。主に代謝、解毒、排泄という生命に関わる機能を担い、これらが全く機能しなくなるのが「肝不全」で、生きていくことはできません。「代謝」とは、食事から摂った糖質、蛋白質、脂質を体に必要な物質やエネルギーに変えることです。「解毒」とは、アルコールや薬剤などを分解して無毒化することです。「排泄」とは、脂肪の消化・吸収を助ける胆汁を合成し排泄することで、胆汁の排泄が悪くなると黄疸が出ます。
「肝臓病」とは、肝臓の機能が低下した状態であり、急性と慢性があります。急性肝炎など急性の肝臓病は、発熱、体のだるさ、疲労感、食欲不振、吐き気、黄疸などの症状が現れ、発見されやすいのですが、慢性肝炎や肝硬変症など慢性の肝臓病では、軽い疲労感程度で自覚症状のないことが多く、肝臓が「沈黙の臓器」と言われるゆえんです。しかし肝硬変症が進行すると、黄疸、手足のむくみ、腹水、食道や胃の静脈瘤からの出血などを来し、さらには肝臓がんを合併することもあります。病状は静かに進行するので、健康診断で肝臓の状態を知ることが大切です。
肝臓病には、図に示したようにウイルスによって発症する「ウイルス肝炎」とウイルス以外の肝臓病があります。

「ウイルス肝炎」には、A型、B型、C型肝炎があります。「A型肝炎」はウイルスに汚染された食物・飲料により経口感染しておこりますが、急性のみで慢性化や再発はなく、ほとんどは治ります。ただ高齢者では重症化しやすく注意が必要です。「B型肝炎」は血液を介して感染する肝炎です。キャリア(ウイルス持続保有者)の大半は、B型肝炎の母親から生まれるときに感染(母子感染)していましたが、現在は乳児に免疫グロブリンを投与し、さらにワクチンを接種するようになり、母子感染はほぼ予防できます。しかしキャリアの一部は、慢性肝炎、肝硬変症へと進行することがあります。大人になって初めて感染した場合は、急性肝炎を起こしますが慢性化はしません。「C型肝炎」も血液感染しますが、母子感染は少なく、以前は輸血などの医療行為によって感染しました。しかし現在は輸血血液は厳しくチェックされ、感染はほぼありません。ただ急性肝炎は高率に慢性化し、慢性肝炎は比較的ゆっくりと進行していくことが多く注意が必要です。
ウイルス以外の肝臓病には、「自己免疫性肝炎」といって自分で自分の肝細胞を壊してしまう慢性の肝炎や、「原発性胆汁性肝硬変症」といって胆汁が流れる細い胆管のまわりに炎症が起こり、胆汁の流れが悪くなる病気などがありますが、それほど多くはありません。むしろ日常生活によって起こる肝臓病が増加しつつあります。「脂肪肝」は肝臓が脂肪を処理出来なくなり、肝細胞の中に中性脂肪が貯まった状態で、肥満、アルコール多飲、糖尿病などが主な原因です。自覚症状は少なく、健康診断などで発見されることが多くなっています。「アルコール性肝障害」はアルコール過剰摂取が原因で、肝臓が処理しきれず、肝細胞が破壊される障害です。脂肪肝や肝線維症のうちはまだいいですが、飲酒を続けるとアルコール性肝炎や肝硬変症に進行します。「薬剤性肝障害」は現在大きな問題となっていますが、薬剤の副作用の一つで薬剤に対するアレルギー反応によって肝臓に障害が起こります。原因薬剤を速やかに中止することが大切です。
肝臓の状態を知るには、次の検査があります。血液検査では、肝細胞の破壊の程度(GOT・GPTなど)、必要な物質の合成力(アルブミン、コレステロール、凝固蛋白など)、解毒・排泄能(ビリルビン、アンモニアなど)が把握でき、肝炎ウイルス感染のチェックも可能です。腹部超音波検査やCT検査では、障害によって変化した肝臓の形や肝臓がんの有無を調べます。内視鏡検査では食道や胃の静脈瘤が発見できます。肝生検は肝臓を細い針で採取し、顕微鏡で実物の肝臓を観察しますので、確実な診断が得られます。
肝臓病治療は最近著しく進歩しました。肝炎ウイルスをやっつける抗ウイルス剤(インターフェロン、リバビリン、ラミブジンなど)、過剰な免疫力を抑える免疫抑制剤、胆汁の排泄を助ける利胆剤などの薬剤が充実してきました。肝臓がんにも新しい内科的治療法が導入され、さらに肝不全の患者さんには肝移植(主に生体部分肝移植)も可能になっています。
肝臓病とくに慢性の肝臓病は自覚症状が現れにくく、静かに病状が進行するので、定期的な健康診断により、肝臓の状態を知ることが大切です。肝機能に異常が認められた場合には、すぐに医療機関を受診して精密検査をしてもらい、早期に適切な治療と生活・食事などの指導を受けるようにしましょう。
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1 |
岐阜市民病院長 伊藤隆夫 | |
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小児夜間急病センター 鷹尾 明 | |
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3 |
呼吸器病センター長 澤 祥幸 | |
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肝臓内科部長 杉原潤一 | |
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5 |
薬剤部 | |
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6 |
澤 祥幸 | |
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7 |
編集部一同 |